2021.06.06

「食」から生き方を選択する時代がやってきた ~「プレミアム★フードショー2021」から見えたいま(前編)~

三津田 治夫三津田 治夫

アグリカルチャー / コラム / 知活人ノート

コロナ禍で再確認された、体にいい食のこと

コロナ禍で爆発的に増えたものの一つに、自炊がある。
 なにせ、飲食店の時短営業や営業自粛で外食がままならない。
 コンビニ弁当は食べ飽きる。デリバリーやテイクアウトは懐にじわじわこたえる。免疫力が高いとコロナにかからないというまことしやかな噂(あくまで大雑把な健康論として、だが)もあることだし、これを機に食生活を見直そうという気になった人たちも多いはず。
 実際に自分で食材を買うようになると、どの店の野菜はおいしいとか日持ちがするとか、いままで気づかなかった違いを実感するようになる。
 スーパーの野菜売り場では、一年中一通りのものがあるのであまり旬は感じにくい。が、それでも生のタケノコがドンと店頭に並べば「おお、たけのこか!」と感慨深く眺めたり、夏が近づくとトマトの値段が下がってきて「あ、トマトは夏の野菜なんだな」と、知識として知っていたことを実感したり。
 そうした小さな発見が単調な日々に彩を与えてくれる。

 自炊をするということは、「自分が何をどのくらい食べているのか」を知る作業でもある。
 時間がないときはともかく、なるべく日常的に栄養バランスの取れたものを適量食べるようになると、体の調子がよくなって、その喜びが自炊を「面倒くさいものではなく楽しいもの」に変えてくれる。
 次は素材の質に注意して、もっと体にいいものを摂ろうという気持ちが起きる。すると目についてくるのがオーガニック、有機認証の文字だ。
 
 有機認証とは、一定の基準に基づいて生産されたことを、第三者機関が認証するもので、日本では有機JAS制度に則り国産品だけでなく輸入品も対象とし、認証を受けなければ「有機」「オーガニック」と表示できない。ちなみに有機農産物の基準は

  • ① 堆肥などで土づくりをしている
  • ② 基本は土壌を用いた農業生産を行う
  • ③ 環境への負荷を可能な限り低減化する
  • ④ 種まきや植え付けの前2年(※多年生植物は3年)以上、禁止された農薬や化学肥料の不使用
  • ⑤ 遺伝子組み換え技術を使用しない

といったものがあり、加工食品や輸入食品には異なる基準が設けられている。また有機JAS認証以外にも登録認証機関があり、食品以外にも例えば「オーガニックコットン」など有機認証制度は広まりつつある。
 かつてはオーガニック食品といえば一般的な店で買えるものではなかった。が、昨今ではスーパーマーケットでも有機野菜のコーナーがあるのは珍しくない。おいしさだけでなく食材に安心・安全を求めるという意識が定着しつつある。調味料などの加工品でも「化学調味料不使用」「遺伝子組み換え作物不使用」といった文言が一つの売りになっている。

オーガニック食材のいまが見える展示会を取材

そんなコロナ禍での食生活の変化をふまえ、オーガニック食品の市場動向が知りたくなり、東京ビッグサイト青海展示棟で開催された「プレミアム★フードショー2021」(4月21~23日開催)の初日に足を運んでみた。
 時代のニーズに合わせ「ハラールマーケットフェア」「オーガニックフードEXPO」「ベジタリアンフードゾーン」「グルテンフリーコーナー」のテーマに沿って、65の出展者がそれぞれの商品をアピール。
 コロナ禍中の開催で従来の賑わいは見られないものの、コロナ感染への危惧から免疫力を高める食品への興味が高まっている背景もあり、情報を求める来場者の熱量は高い。
 オーガニックフードゾーンを回ってみて感じたのは、野菜をはじめとする食材そのものを持ち込んでいる展示ブースはあまりなく、それらの加工品を紹介するブースが多いこと。出展者のボリュームは、海外のオーガニック食材およびその加工品を輸入販売する業者が最も多く、次に国内外のオーガニック食材を使った加工品を製造する業者、国内のオーガニック食材を仕入れ販売する業者が続く。国内産のオーガニック食材の量を考えれば、まず妥当な配分だろう。

◎「プレミアム★フードショー2021」会場の風景

安全性からオーガニックの需要が高い子供向け食品

加工品で目を引いたのは、リブインコンフォートのブースだ。しゃれたデザイン、かつ機能的なパッケージは、オーガニック市場のメインターゲットである女性が「かわいい!」と飛びつく大きな要素だ。
 すでに「オーガニックティー&コーヒーBREW COMPANY」は、紀伊国屋などの高級スーパーマーケットやセレクトショップで販売され人気を博しているという。
 今回の展示会では、日本初上陸の「オーガニックスムージーBaby Fruit“ベビーフルーツ”」を紹介している。「ベビーフルーツ」は砂糖や着色料、保存料を使わず、有機栽培の果物だけを材料とした、乳児用規格適用食品だ。
 手軽なパウチタイプで、賞味期限は常温保存で12か月ある。子どもに安全でおいしい食品を与えたい、多忙な子育て家庭で「あったら便利!」と思わせる商品だ。
 スタッフによると、すでに赤ちゃん本舗での取り扱いも決まっているという。そろそろ目新しい商品はないかと声をかけられ、リブインコンフォートがイタリアから探してきたのがこの「ベビーフルーツ」。
 我が子に体に良いものを食べさせたいという親の愛情から、こうした子供向けオーガニックフード需要は常に高い。昨今は食事やおやつ作りに手間暇をかけられない家庭向けの、手軽に食べさせられる加工食品のニーズが特に求められている模様だ。
 材料がシンプルな子供向け商品は中身のバリエーションで競合商品との差をつけるのが難しい。パッケージデザインが優れた海外物はプレゼント需要も見込めるため、多少価格が高くても十分売り場で勝負できるという。

◎赤ちゃん向けのオーガニック食品

時短調理にも安全・安心が求められる

 

かつてオーガニック食品を買い求める消費者は、手間と時間を惜しまずに食事の支度をする、いわゆる「丁寧な暮らし」をするもので、時短などというキーワードとは無縁だった。しかし、オーガニック食品消費者のすそ野が広がる中、食材そのままの商品よりも、なるべく簡単に料理できる形になっている食材や調味料の人気が高まっている。
 「金ごまドレッシング」など、ごまを使った調味料で有名な富貴食研では、酵母エキスやたん白加水分解物を使用せず、様々な味の鍋の素や麺類のつゆ、中華総菜の合わせ調味料などの開発、販売に力を入れている。
 有機認証こそとっていないが、主原料に極力国産材料を使うなど、健康志向の強い消費者に対しアピールポイントを増やす中、国産の有機JAS認証をとった野菜と玄米を使用した「有機の玄米ポタージュ」シリーズを発売。酵母エキス、たんぱく質加水分解物に加え、動物性原料を使用していないレトルト食品で、袋ごと湯煎、または別の容器に移して電子レンジで温めて食べられるだけでなく、常温でも食べられる手軽さが売りだ。
 パンやサラダを添えれば、すぐに彩りよい食事が完成するとあって、独り暮らしの女性を中心にまとめ買いするユーザーが多い。

◎手軽さと安全性を追求したレトルト食品もオーガニック

 もう1社、コロナ禍でますます需要が伸びているというのが、楽天ファーム・オーガニック&ナチュラルマーケットだ。
 ブルーベリーなど一部海外産の食材もあるが、基本的に国産の有機野菜を使用した、使いやすくて賞味期限の長い冷凍野菜や、洗ってカットされているため袋から出せばすぐに食べられるカットサラダは、料理の手間を省きたい人にとって救いの神である。
 楽天市場ユーザーというすでに獲得している大量の顧客は、当然ネット通販のヘビーユーザー。実際、定期宅配でのリピーターは着実に増えており、今後楽天の物販部門で大きな位置を占めていきそうだ。

◎冷凍生野菜のパッケージ

オーガニックの海産物は今後の商品価値に

 

海外のオーガニック食材といえばコーヒーやカカオ、オリーブオイル、ハーブ類は以前からよく見かけるが、フルヤ物産では日本ではまず見かけないグリーンひよこ豆や、オーガニック海藻が紹介されていた。
 同社は山梨県の自社農場で農薬8割減、化学肥料不使用の桃栽培に加え、国内約300軒の生産者とのつながりを生かして食品メーカーや飲食店へ産直野菜を供給。さらに、オーガニックやヴィーガン、グルテンフリー、ハラール対応の加工品の輸入販売も手掛けている。
 その商品の一つがオーガニック海藻だ。日本では農産物でない海藻で有機JAS認証はとれないが、海外では海藻にもオーガニック認証制度があり、フルヤ物産ではアイルランドのオーガニック認証機関の認定を受けた海藻を輸入販売している。
 海藻は健康や美容への意識が高い人々に人気の食材であり、福島第一原発事故後、日本近海の状況を心配する消費者は多く、こうした海外の認定機関でオーガニック認証をとった海藻があるという認識が広まれば、その安全性は食品の付加価値を高めるはずだ。
 フルヤ物産で扱うオーガニック海藻には、熱を加えるとベーコンのようにスパイシーな味わいが出るものなど日本ではあまりなじみが薄いが、いままでよく食べられている海藻とは全く違う使い方ができる海藻もある。レシピなどもあわせて紹介することで、今まであまり海藻を食べていなかった人、食べ方が限定されていて消費量がそれほどなかった人といった潜在需要も掘り起こせる可能性も高い(後編に続く)。

(取材・文/湊屋一子)


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